テレワークや外出先から社内のパソコン・NAS・業務システムを利用したいとき、よく候補になるのが「VPN」と「リモートデスクトップ」です。
どちらも社外から仕事をするために利用できますが、仕組みや用途は大きく異なります。
「テレワークならVPNとリモートデスクトップのどちらがいい?」
「社内NASにアクセスするならどちら?」
「セキュリティや費用に違いはある?」
と迷っている企業も多いでしょう。
この記事では、VPNとリモートデスクトップの違いを比較しながら、中小企業がテレワーク環境を構築する場合の選び方をわかりやすく解説します。
VPNとリモートデスクトップの違い
最初に押さえておきたいのは、VPNとリモートデスクトップは同じものではないという点です。
VPNは、社外のパソコンなどから社内ネットワークへ安全に接続するための仕組みです。
一方、リモートデスクトップは、離れた場所にあるパソコンを遠隔操作する仕組みです。
たとえば自宅から仕事をする場合、
VPN
自宅PC → VPN → 社内ネットワーク → NAS・サーバーなど
リモートデスクトップ
自宅PC → インターネット → 社内PCを遠隔操作
という違いがあります。
【画像①挿入:VPNとリモートデスクトップの仕組みの違い】

VPNとリモートデスクトップを比較
主な違いを整理すると次のようになります。
| 比較項目 | VPN | リモートデスクトップ |
|---|---|---|
| 主な目的 | 社内ネットワークへの接続 | 社内PCの遠隔操作 |
| 社内NASへのアクセス | ○ | △ 社内PC経由なら可能 |
| 社内システム利用 | ○ | ○ |
| 社内PCの操作 | 基本的にしない | ○ |
| 社外端末での作業 | ○ | ○ |
| 通信環境の影響 | 受ける | 受けやすい |
| 導入・設定 | VPN環境の構築が必要 | 遠隔操作環境が必要 |
| セキュリティ | 適切な設定・管理が必要 | 適切な設定・管理が必要 |
重要なのは、どちらが優れているかではなく、何を社外から利用したいのかです。
VPNが向いているケース
VPNは、社外から社内ネットワークへ接続して、NASやファイルサーバー、業務システムなどを利用したい場合に向いています。
社内NASを利用したい
中小企業で多いのが、社内NASに保存しているファイルを自宅や外出先から利用したいケースです。
VPNを利用すると、社外からVPN経由で社内ネットワークへ入り、NASへアクセスする構成を作れます。
NASへの外部アクセス方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→ NASに外からアクセスする方法|中小企業向けに安全なリモートアクセスを解説
複数の社内機器を利用したい
NASだけでなく、ファイルサーバーや社内システムなど複数の社内リソースを利用する場合もVPNが選択肢になります。
社外端末を社内ネットワークへ接続することで、必要なシステムへアクセスできる環境を構築できます。
拠点間を接続したい
本社と営業所など、複数拠点のネットワークを接続する用途でもVPNは利用されます。
この場合はテレワーク向けVPNとは構成が異なることもあるため、利用目的を明確にしてから導入することが重要です。
社外から社内ネットワークへアクセスしたい場合
専任のIT担当者がいない中小企業では、VPN機器を自社で選定・設定・管理することが負担になる場合があります。
その場合は、導入や運用を簡素化できるVPNサービスも比較してみましょう。
リモートデスクトップが向いているケース
リモートデスクトップは、社内にあるパソコンそのものを社外から操作したい場合に向いています。
社内PCにしか入っていないソフトを使いたい
業務ソフトや専用システムが社内PCにしかインストールされていない場合、リモートデスクトップを使えば、自宅などからそのPCを操作できます。
データやアプリケーションを社外端末へ移す必要がない点も特徴です。
社内PCと同じ作業環境を使いたい
会社で使用しているデスクトップ環境をそのまま利用したい場合にも適しています。
自宅PCの性能やソフトウェア環境に左右されにくいというメリットがあります。
データを社外端末へ保存したくない
リモートデスクトップでは、基本的に社内PC上で処理を行います。
適切な設定・運用を行えば、業務データを社外端末へ持ち出さずに作業する構成を作ることもできます。
テレワークならVPNとリモートデスクトップのどちら?
テレワークだから必ずVPN、あるいは必ずリモートデスクトップというわけではありません。
業務内容によって選びます。
NASやファイルサーバーを使いたい
社外のPCからNASやファイルサーバーへアクセスしてファイルを利用するなら、VPNが有力な選択肢です。
VPNを利用してNASへアクセスする必要性については、こちらも参考にしてください。
→ NAS外部アクセスにVPNは必要?法人・中小企業向けに安全な方法を解説
社内PCそのものを使いたい
社内PCにしかないソフトウェアを利用するなど、会社のPCをそのまま遠隔操作したいならリモートデスクトップが向いています。
両方を組み合わせる方法もある
VPNとリモートデスクトップは、必ずどちらか一方だけを選ぶものではありません。
VPNで社内ネットワークへ安全に接続したうえで、社内PCをリモート操作する構成もあります。
ただし、構成が複雑になるほど設定や運用管理も必要になります。
中小企業では「高機能な環境を作ること」よりも、自社で安全に管理し続けられることを優先しましょう。

VPNとリモートデスクトップのセキュリティを比較
どちらを利用する場合でも、セキュリティ対策は必要です。
VPNのセキュリティ
VPNでは通信を暗号化できますが、VPNを導入しただけですべて安全になるわけではありません。
VPN機器の更新、アカウント管理、アクセス権限、認証方法なども重要です。
特に退職者のアカウントを残したままにしたり、古いVPN機器を更新せずに利用したりすることは避ける必要があります。
詳しくはこちらで解説しています。
→ VPN利用時のセキュリティ対策|中小企業が注意したいポイントを解説
リモートデスクトップのセキュリティ
リモートデスクトップも、インターネットから不用意に直接アクセスできる状態にするのは避けるべきです。
強固な認証、アクセス制限、OSやソフトウェアの更新などを行い、安全な接続方法を設計する必要があります。
「接続できればよい」ではなく、誰が・どの端末から・どの方法で接続できるのかを管理することが重要です。
VPNとリモートデスクトップの費用の違い
費用も選択時の重要なポイントです。
VPNでは、
- VPN対応機器
- 初期設定
- VPNサービス
- 保守
- 運用管理
などの費用が発生する可能性があります。
一方、リモートデスクトップでも利用する製品やサービスによって、ライセンス費用や設定費用、管理コストなどが必要になります。
単純に「VPNはいくら」「リモートデスクトップはいくら」と比較するのではなく、導入から運用までの総コストで考えることが大切です。
VPNの費用についてはこちらで詳しくまとめています。
→ VPN導入費用はいくら必要?初期費用・月額料金・運用コストを徹底解説
VPNの導入費用だけでなく管理負担も比較
VPN機器を自社で用意する場合、機器代だけでなく設定や保守も必要になります。
専任担当者がいない場合は、導入後の管理負担も含めてVPNサービスと比較してみましょう。
中小企業はどう選べばいい?
中小企業では、次の順番で考えると選びやすくなります。
1.社外から何を使いたいか決める
まず、
「NASのファイルを使いたい」
「社内システムを使いたい」
「会社のPCをそのまま操作したい」
など、目的を明確にします。
ここが決まらないまま機器やサービスを比較すると、必要以上に複雑な構成になる可能性があります。
2.利用人数を確認する
テレワークをする社員数ではなく、実際に同時接続する可能性がある人数を確認します。
VPN機器を選ぶ場合にも重要なポイントです。
3.誰が管理するのか決める
中小企業では、ここが特に重要です。
社内にIT担当者がいるなら、自社でVPN機器を構築・管理する方法もあります。
一方、専任担当者がいない会社では、設定やトラブル対応まで自社で行うのが負担になることがあります。
4.導入後まで含めて比較する
初期費用だけでなく、
設定 → 運用 → 更新 → トラブル対応
まで含めて比較しましょう。
導入時に多少安くても、管理に大きな手間がかかれば、結果的に負担が増えることがあります。
VPNとリモートデスクトップに関するよくある質問
VPNとリモートデスクトップは同じものですか?
違います。
VPNは社外から社内ネットワークへ接続する仕組みで、リモートデスクトップは離れた場所にあるPCを操作する仕組みです。
VPNがあればリモートデスクトップは不要ですか?
用途によります。
NASやファイルサーバーを利用するだけならVPNで目的を達成できる場合があります。
一方、社内PCにしかないアプリケーションを操作したい場合は、リモートデスクトップが適していることがあります。
VPNとリモートデスクトップを併用できますか?
できます。
VPNで社内ネットワークへ接続してから社内PCを遠隔操作する構成も考えられます。
ただし、設定や管理が複雑になる可能性があるため、自社の運用体制に合っているか確認しましょう。
NASへの外部アクセスにはどちらがおすすめですか?
NASに保存されたファイルへ直接アクセスしたい場合、VPNが有力な方法の一つです。
ただし、NASメーカーが提供するリモートアクセス機能やクラウドを利用する方法もあります。
目的に応じて比較することが重要です。
まとめ|VPNとリモートデスクトップは目的で選ぼう
VPNとリモートデスクトップは、どちらもテレワークで利用できますが、目的が異なります。
VPNは、社外から社内ネットワークへ接続し、NAS・ファイルサーバー・業務システムなどを利用したい場合に向いています。
リモートデスクトップは、社内にあるパソコンそのものを遠隔操作したい場合に向いています。
中小企業では、
「何を利用したいか」→「何人で利用するか」→「誰が管理するか」→「費用はいくらか」
という順番で考えると、自社に合った方法を選びやすくなります。
VPNを利用したいものの、自社でVPN機器を設定・管理することに不安がある場合は、運用を簡素化できるVPNサービスも比較してみましょう。


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